、ちょっと行きどころを忘れたようにとまどいした。そうして不意を喰らった谷川が、大袈裟に立てている水の音を聞いていると、おかしくなる程だった。それからは、どんどん流れて行きながらも、まるで迷路へはいってしまって独り口でも利いているように、川のささやきは止まなかった。思うに、暗い筈の谿がこんなに明るくはなっているし、その上、沢山の子供達がおしゃべりをしたり、騒ぎまわったりしているので、川もびっくりしたのであろう。とにかく、そんな風にして、川はどんどん谿間をくぐって、湖水の中へと注《そそ》いでいた。
ユースタス・ブライトとその小さな仲間達とは、このシャドウ川の谿で昼食《ちゅうじき》をした。彼等はタングルウッドからうまい物をどっさりバスケットに入れて持って来て、それを木の切株や、苔むした木の幹の上にひろげて、愉快に騒ぎながら、とてもおいしくいただいた。それがすむと、みんながっかりしてしまった。
『ここで休んで、ユースタスにいさんに、また何かいいお話をしてほしいなあ、』と子供達の幾人かが言った。
従兄《カズン》ユースタスだって、当然、子供達同様|草臥《くたび》れていた。というのは、この楽しか
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