ているわけでもないのに、まるで新しくつくり出されたもののような気がするほどだった。半マイルばかり先の谷間の窪《くぼ》に、美しい湖水が姿を見せて、その岸辺の林と、向うの山々の頂とをくっきりと映していた。その水面は鏡のように静かに光って、どこにも微風《そよかぜ》の吹くあとさえ見えなかった。その向う岸には、殆ど谷間を横に仕切ったように、ながながと寝そべったような恰好のモニュメント山があった。ユースタス・ブライトはその山を、波斯《ペルシャ》風のショールにくるまった、首のないスフィンクスに譬えた。そして実際、その山の木々《きぎ》の秋の葉は、とても美事で、色彩の変化に富んでいたので、波斯《ペルシャ》ショールの譬えも決してその現実を誇張したものではなかった。タングルウッドと湖水との間の低地の、こんもりとした木森《きもり》や林の縁廻りなどは、山腹の木の枝葉《えだは》よりもひどく霜を受けたと見えて、大抵は金色か焦茶色に紅葉していた。
こうした眺め一杯に快い日の光がさして、それにまつわるかすかな靄《もや》のために、何とも言えない柔味《やわらかみ》とやさしみとを帯びていた。おう、今日こそどんなに気持のいい
前へ
次へ
全307ページ中68ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ホーソーン ナサニエル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング