親切な老夫婦で、戸口に立つ、疲れ切った旅人に対して、一きれの黒パンや、一杯の新しい牛乳や、一匙の蜂蜜をことわるよりも、いつでも喜んで自分達の御馳走を抜きにするという風でした。彼等は、そうした客には、何かしら神聖なところがあるような気がしました。だから、そうした人達を、彼等自身よりも大事に、十分にもてなさなければならないと思ったのです。
 彼等の小さな家は、半マイルばかりの幅の、くぼんだ谷にある村から少しはなれた、小高いところにありました。その谷というのは、まだ世界が新しかった昔の時代には、おそらく湖の底にでもなっていたのでしょう。その湖には、魚が深いところをあちこちと泳ぎまわり、岸の方には水草が生え、木や丘はその広い、静かな水面に影をうつしたことでしょう。しかし、水がだんだんと退《ひ》いて行ってしまった時、人達はそこの土をたがやし、そこに家を建てました。そして今では地味の肥えた所となって、ほんの小さな谷川のほかには、昔の湖のあとはなんにも残っていませんでした。その谷川は、村のまん中をうねうねと流れて、村人達がその水を使っていました。この谷の水が退《ひ》いてからは、もう随分久しくなるので
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