立上って、どこへ来たのかと思って、あたりを見まわしました。彼はやがて、その椀が海を大方渡ってしまって、どこかの島らしい海岸に近づいていたことを知りました。そしてその島に、彼が何を見たと君達は思いますか?
 いいえ、なかなか見当がつかないでしょう。たとえ五万たび言って見たところで、当らないでしょう! 僕にもこれは断然、彼の驚くべき旅と冒険との全行程のうちで、ハーキュリーズが今までに見た一番驚くべき光景だったと思われます。それは、切られるとすぐ倍になって生えて来る九つの頭を有《も》ったハイドラよりも、あの六本足の怪人よりも、アンティーアスよりも、ハーキュリーズの時代より前に、或は後に、誰が見たどんなものよりも、またこれから先ずうっと次から次へあらわれて来る旅行者が見るかも知れないどんなことよりも、更に驚くべきものでした。それは一人の巨人でした!
 しかし、お話にもなんにもならないような巨人だったのです! 山のように高い巨人で、あまり大きいので、雲がおおよそ彼の腰のあたりにかかって、帯をしめたように見えたり、白いあごひげみたいに頤の下にかかったりしました。また彼の大きな眼の前も通って行くので
前へ 次へ
全307ページ中189ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ホーソーン ナサニエル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング