!』と箱の中の小さな声は、ずるそうな、笑い出しそうな調子で言いました。『あの児は自分でも、わたしを見たくてならないのは分っているんですよ。さあ、パンドーラさん、蓋をあけて下さい。わたしはあなたを慰めてあげようと思って、大変気が急《せ》いているんです。ほんのちょっとわたしにいい空気を吸わせて下さい。そうすれば、あなたが考えているほど、そうひどく悲観したものでもないということが分るでしょう。』
『エピミーシウス、』とパンドーラは叫びました、『何だってかまわないから、あたし箱をあけて見るわ!』
『じゃ、蓋が大変重そうだから、僕が手伝って上げよう!』とエピミーシウスは叫んで、部屋の向うから駆けて来ました。
 こうして、双方承知で、二人の子供はまた蓋をあけました。すると、明るい、にこにこした小さな人が飛び出して来て、部屋の中を舞って歩きましたが、彼女の行くところは何処でも明るく見えました。君達は鏡のかけらで日光を反射させて、暗いところでちらちらさせて見たことはありませんか? とにかく、この妖精のような見知らぬ人が、薄暗い家の中を愉快そうに飛び廻る有様は、そんな風に見えました。彼女がエピミーシウス
前へ 次へ
全307ページ中148ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ホーソーン ナサニエル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング