でも何だかことわりにくくなってしまうような、一種の愉快な魅力が、その調子の中に含まれていました。パンドーラの心は、その箱の中から聞えて来る一語々々に、知らず識らず軽くなっていました。エピミーシウスもまた、まだ隅の方にはいましたが、半分こっちを向いて、前よりもいくらか機嫌がよくなっている様子でした。
『ねえエピミーシウス、』とパンドーラは叫びました、『あんたこの小さな声を聞いて?』
『うん、たしかに聞いたよ、』と彼は答えましたが、まだあまりいい機嫌ではありませんでした。『で、それがどうしたんだい?』
『あたしもう一度、蓋をあけたもんでしょうか?』とパンドーラは訊きました。
『そりゃ君の好きなようにするさ、』とエピミーシウスは言いました。『君はもう大変な悪いことをしちゃったんだから、その上もうちょっぴり悪いことをしたっていいだろうよ。君が世間にまき散らしたような「わざわい」の大群の中へ、もう一匹ほかのやつが出て来たところで、別に対したことはありっこないさ。』
『あんた、もう少し親切に口を利いてくれたっていいでしょう!』とパンドーラは、目を拭きながら言いました。
『ああ、しようのない児だねえ
前へ
次へ
全307ページ中147ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ホーソーン ナサニエル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング