、――
『蓋をあけてさえ下されば、分りますよ。』
『いや、いや、』とパンドーラは、また啜《すす》り上げはじめながら答えました、『あたし蓋をあけることは、もう沢山だわ! お前は箱の中にいるんでしょ、意地悪さん、いつまでもそこに入れといてやるから! お前のいやな兄弟や姉妹は、もう、一杯世の中を飛び廻っているよ。お前を出してやるほど、あたしが馬鹿だと思ってもらっちゃ困るわ!』
彼女はそう言いながら、多分エピミーシウスが彼女の分別をほめてくれるだろうと思って、彼の方を見ました。しかし怒っているエピミーシウスは、彼女が今から分別を出したって、少し手おくれだ、とつぶやいただけでした。
『ああ、』とその小さな、いい声はまた言いました、『あなたはわたしを出して下さった方が、ずっといいんですよ。わたしは、あんなお尻に螫《はり》のくっついたような悪い者とは違うんです。彼等はわたしの兄弟や姉妹じゃありません。それはあなたがわたしを一目《ひとめ》ごらんになりさえすれば分ります。さあ、さあ、可愛らしいパンドーラさん! きっとわたしを出して下さるでしょうね!』
そして、実際この小さな声で頼まれると、どんなこと
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