ていたことを言わなければなりません。尤もそれは、まだお日様を蔽《おお》いかくすまでにはなっていませんでした。しかし、エピミーシウスが家の戸口に着いたちょうどその時、それが日光をさえぎりはじめました。そうして、急に、うら悲しいような薄暗がりになりました。
 彼はそうっとはいって行きました。というのは、彼は出来ることなら、パンドーラのうしろにしのび寄って、彼が傍へ来たことを彼女がさとらないうちに、花環を彼女の頭に投げかけてやろうと思ったからでした。しかしちょうどその時には、彼は何もそんなに、抜足《ぬきあし》差足《さしあし》で行く必要はなかったのです。彼が好きなだけ大きな足音を立てても――大人のように――いや、象のようにと僕は言いたい位だが――どしんどしんと歩いても――それでもたいていは、パンドーラの耳にはいりそうもありませんでした。彼女は自分の考えにすっかり気をとられていたのです。彼が家へはいって行った時、ちょうどその仕方のない子は、蓋に手をかけて、秘密の箱をあけようとするところでした。エピミーシウスは彼女のすることを見ていました。もしも彼が声を立てていたら、パンドーラは多分手をひっ込めて
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