、その箱のおそろしい秘密も分らずにしまったことでしょう。
 しかしエピミーシウスは、あまり箱のことを口に出しては言わなかったが、自分でもやはり、その中に何がはいっているか知りたい気持はあったのでした。パンドーラがいよいよその秘密を知ろうと決心したことが分ると、彼の方でも、この家の中でそれを知っているのがパンドーラだけであってなるものかと思いました。それに、もしもその箱の中に何かきれいなものか、値打のあるものがはいっていたら、彼もその半分は自分がもらうつもりでした。こんなわけで、パンドーラにむかって、好奇心など起してはいけないと、真面目くさってお説教をしておきながら、エピミーシウスは彼女とまるで同じように馬鹿になり、このあやまちについて責任があるという点で彼女とあまり変りはないことになってしまいました。だからわれわれは、この出来事について、パンドーラを責める時にはいつでも、エピミーシウスにむかっても、やはり同じように不満の意をあらわすことを忘れてはならないのです。
 パンドーラが蓋を持ち上げた時に、家は大変暗く、陰気になって来ました。というのは、黒雲がもうすっかりお日様をかくしてしまって
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