しないわ。いくらエピミーシウスだって、それ位なことを怒りはしないでしょう。あたしその箱をあけなくともいいんですもの。そして、もしも結び目がほどけたにしても、あのお馬鹿さんにきかないで、開けたりなんぞしちゃ悪いわ。』
こんな風に始終この一つ事ばかりを考えなくともすむように、彼女にちょっとする仕事でもあるとか、何か考えることでもあるとかした方がよかったのでしょう。しかし、世の中に「わざわい」というものが出て来るまでは、子供達は大変気楽に暮らしていたので、ほんとにあまり暇がありすぎたのです。彼等だって、何時《いつ》も何時《いつ》も、花の咲いた灌木の中でかくれんぼをしたり、花環で目かくしをして鬼ごっこをしたり、そのほか地球がまだ新しかったその頃に、もう出来ていたいろんな遊びばかりもしていられませんでした。毎日遊んで暮らしていると、働くことが却って本当の遊びとなります。その頃には、まるですることはなんにもありませんでした。まあ、家の中をちょっと掃いたり、拭いたりする、それから新しい花を切る(それも至るところ、いやになってしまうほど沢山咲いているんです)、そしてそれを花瓶に生ける、――それでもう
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