はしないか、見てごらん!』
僕はも少しで言うのを忘れてしまうところだったが、その箱は締《し》めてありました。錠前とか、何かほかのそういったようなものでなしに、金の紐を大変込み入った結《むす》び方にして留めてあったのです。この結び目には、終りもなければ、始めもないように見えました。大変むずかしくひねくり廻して、とても沢山の出入りがあって、それがどんな手先の器用な人でも、ほどけるならほどいて見よと、憎らしくも威張っているように思えるのですが、こんな結び目もないものでした。しかし、それをほどくのが大変むずかしそうなので、よけいにパンドーラはその結び目をしらべて、それがどんな風に出来ているか、ちょっと見たくなって来ました。彼女はもう、二三度はその箱の上にかがんで、その結び目を親指と人差指との間につまんで見たことはありましたが、それをいよいよほどいて見ようとまではしなかったのでした。
『あたし本当に、それがどんな風に出来ているか、分って来た気がするわ、』と彼女は一人で言いました。『いや、あたしはそれをほどいてから、また結び直すことさえ出来そうだわ。ほんとに、それ位なことをしたって、何でもありは
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