と見ると、醜いように見えたのでしょうか。
顔のうちで一番美しいのは、蓋のまん中に、高浮彫《たかうきぼり》という彫り方で出来ている顔でした。蓋の板は、磨きをかけて、黒っぽい、なめらかな、ゆたかな美しさを出し、そのまん中に、額《ひたい》に花の冠を巻いたその顔があるだけで、ほかに細工はしてありませんでした。パンドーラはこの顔を幾度も幾度も眺めて、その口もとは、生きた口と同じように、笑おうと思えば笑えもし、真面目な顔つきになろうと思えば、またそうもなれそうな気がしました。実際、その顔つき全体が、大変いきいきとした、そしてどちらかといえば、いたずららしい表情をしていて、それがきっとその木彫《きぼり》の唇から、言葉になって飛び出して来そうに思われるくらいでした。
もしもその口が物を言ったとしたら、大抵、次のようなことででもあったでしょう。
『こわがるんじゃないよ、パンドーラ! この箱をあけたって何事があるものかね? あの可哀そうな、馬鹿正直のエピミーシウスのことなんか気にすることはないよ! お前さんはあの子より賢いし、十倍も勇気がおありだ。この箱をあけなさい、そして、何か大変きれいなものがあり
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