、その中には、あたしの着る着物か、あんたとあたしとが持って遊ぶ玩具か、それとも二人でたべる何か大変おいしいものかがはいっているんだわ!』
『そうかも知れない、』エピミーシウスは横を向いて答えました。『しかし、クイックシルヴァが帰って来て、あけてもいいと言うまでは、僕達どちらにも、この箱の蓋をあける権利はないんだ。』
『なんて煮え切らない子だろう!』エピミーシウスが家を出て行く時、パンドーラはそうつぶやきました。『もう少し勇気があればいいのに!』
 パンドーラが来てから、エピミーシウスが彼女を誘わないで出て行ったのは、これが初めてでした。彼は一人で無花果《いちじゅく》や葡萄をもぐか、それともパンドーラ以外の誰かと一しょに、何か面白い遊びをしようと思って出たのでした。彼はその箱のことを聞くのが、すっかりいやになってしまって、その使いに来た人の名は、クイックシルヴァだか何だか知らないが、その箱をパンドーラの目につかないような、誰かほかの子供の家の戸口に置いて行ってくれればよかったのにと心《しん》から思いました。パンドーラがその一つ事を、くどくどしく言っている根気のよさと来たら! 箱、箱、ただ
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