ませんでした。
『でも、それがどうしてここへ来たか位なことは言えるでしょう、』と彼女は言いました。
『ちょうど君が来る前に、大変にこにこした、利口そうな人が、それを戸口の傍に置いて行ったんだ、』とエピミーシウスは答えました、『それを置きながら、その人は何だか笑い出したくてたまらないといったような風だったぜ。その人はおかしな外套を着て、半分|羽毛《はね》で出来たような帽子をかぶってね、だからその帽子にはまるで翼が生えているように見えたよ。』
『その人はどんな杖を持っていて?』とパンドーラは尋ねました。
『ああ、とてもおかしな、見たこともないような杖だったねえ!』とエピミーシウスは叫びました。『二匹の蛇が杖に巻きついたようになっていて、その蛇があんまり本物みたいに彫《ほ》ってあるんで、僕はちょっと見た時、生きているのかと思ったよ。』
『あたしその人を知ってるわ、』とパンドーラは、考え込んだように言いました。『ほかにそんな杖を持ってる人はないんですもの。それはクイックシルヴァだわ。箱だけじゃなしに、あたしをここへ連れて来たのもその人よ。きっと彼はその箱をあたしにくれるつもりなのよ。そして多分
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