影みたいなものでしたが、日がたつにつれて、だんだん本物になって来て、そのうちには、とうとうエピミーシウスとパンドーラの家が、ほかの子供達の家にくらべて何だか陰気になって来ました。
『一体あの箱は何処から来たんでしょう?』と、始終パンドーラは独りごとにも言い、またエピミーシウスにも訊《き》くのでした。『そしてまた、一体あの中には何がはいっているんでしょう?』
『いつもこの箱のことばかり言ってるんだねえ!』とエピミーシウスは、とうとう言いました。というのは、彼はもうこの話には、すっかりあきあきしていたからでした。『何かほかの話をしてほしいなあ、パンドーラ。さあ、熟した無花果《いちじゅく》でも取りに行って、木の下で夕飯にそれを食べようよ。そして、僕は誰もたべたことがないくらい甘くて、お汁のたっぷりある実《み》のなる葡萄の木も知ってるんだ。』
『いつも葡萄や無花果《いちじゅく》のことばかり言ってるわ!』と、パンドーラはすねたように叫びました。
『それじゃ、いいよ、』と、その時分のたいていの子供達と同じように、大変気立てのいい子だったエピミーシウスは言いました、『そとへ出て、お友達と面白く遊ぼう
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