揃いの服を着た召使達を引きつれて、馬車に乗ったり、立派な馬に跨がったりして通りかかると、この村の人達ほど丁寧《ていねい》で、ぺこぺこする連中もないという有様でした。彼等は必ず帽子をとって、この上もなく丁寧におじぎをしました。もしも子供がお行儀が悪かったら、たいてい横面《よこつら》の一つも張り飛ばされました。それから犬にしても、沢山いる中の一疋でも唸ったりしようものなら、たちまち主人に棍棒で打たれて、飯《めし》を食わせられないで縛《しば》りつけられました。これもみんな大変結構なことに違いありません。しかし、人間の心の中には、乞食にでも殿様にでも、同じように貴いものがあるのですが、そんなものには一向おかまいなく、ただお金持の旅人の財布の中のお金を目あてに、この村の人達はそんなことをするのだということがすぐ分りました。
フィリーモン爺さんが、村の通りの向うの端の方から聞えて来る子供達の叫び声や、犬の吠える声を聞いた時、あんなに悲しそうに口をきいたわけが、これで君達にも分ったでしょう。そのがやがやした騒ぎは、相当長くつづいて、大方谷の向うの端からこちらまでやって来たようでした。
『わしはまだ犬がこんなに大きな声で吠えるのを聞いたことがない!』といいおじいさんは言いました。
『子供達があんなに乱暴に騒いだこともありませんね!』といいおばあさんは答えました。
彼等はお互に、頭を振りながら坐っていました。その間に、騒ぎはだんだん近づいて来ました。そしてとうとう、彼等の小さな家の建《た》っている小高い丘のふもとを、二人の旅人が歩いてこちらへやって来るのが見えました。彼等のすぐあとから、くっつくようにして唸りながら、きつい犬共がついて来ました。それから少しはなれて、子供達の一群が駆けて来て、金切り声をはり上げて、その二人の旅人に向って、力いっぱい石を投げつけていました。二人のうちの若い方の男(彼はほっそりとして、大変活発な身体《からだ》つきをしていました)が、一二度うしろに向きなおって、手に持った杖で犬を追払いました。彼の連れの、大変背の高い方の人は、犬共にも、またその犬の真似をしているらしい子供達にも、目をくれることさえ馬鹿らしいといったような風に、平気で歩いて来ました。
旅人は二人とも、大変粗末な身形《みなり》をして、財布には宿賃を払うだけのお金もなさそうに見えました。そし
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