、樫の木が生え出して、大きく、高くなり、年月を経て枯れて行って、またそのあとのが生えて、最初のと同じくらい高く、立派になっていました。これほどきれいな、これほどみのりのよい谷は、またとありませんでした。こうして、あたりのものすべてが豊かであるということを見ただけでも、そこに住む人々は、やさしく、親切になって、他人をよくしてあげることによって、すすんで神の御心に対する感謝をあらわすべき筈でした。
 しかし、困ったことには、この美しい村の人達は、神様がこれほどやさしく、いつくしみを垂れた場所で暮らす値打はありませんでした。彼等は大変|身勝手《みがって》な、薄情な人達で、貧乏な人達を憐れみもしなければ、家のない人達に同情もしませんでした。彼等は誰かが、人間というものは、神様から受けた愛と保護との御恩を、ほかに返しようがないから、人間同志お互に愛し合うようにしなければならないと教えても、ただあざ笑ったでしょう。僕がこれから君達に話そうとすることを、君達はほとんど本当にしないかも知れません。これらの悪い人達は、彼等の子供達を彼等よりもいい人になるように教えないばかりか、小さな男の子や女の子が、どこかの気の毒な旅の人のあとを追っかけて、あとからはやし立てて、石を投げつけているのを見ると、えらいえらいといったように、いつも手をたたくのでした。また彼等は、大きな、きつい犬を飼っていて、旅人が思い切ってその村の通りへはいって行こうものなら、早速このやくざ犬の一群が飛び出して来て、吠えたり、唸ったり、歯をむき出したりするのでした。そして、旅人の脚にでも、着物にでも、手あたり次第にくいつきました。だから、来る時からぼろをまとっていた人などは、やっとのことで逃げ出すまでに、もう大抵は目もあてられないような姿になってしまいました。君達にも想像がつくでしょうが、気の毒な旅人が病気だったり、衰弱していたり、びっこだったり、年寄だったりした場合には、とりわけこれはおそろしいことでした。そうした旅人達は、これらの不親切な村人や、いけない子供達や犬共が、いつもどんなに悪いことをするかということが一ぺん分ったら、もう二度とその村を通り抜けようとはしないで、わざわざ幾マイルも幾マイルも廻り道をして行くのでした。
 これ以上悪いことはちょっと考えられない気がしますが、しかしなお悪いことには、お金持の人達が、
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