て、この人達に対して、子供や犬があんなに乱暴なことをしているのに、村の人達が黙って見ていたのは、おそらくこのためではなかったかと思います。
『さあ、お前、』とフィリーモンがボーシスに言いました、『あの気の毒な人達を迎いに行こうじゃないか。きっとあの人達は、がっかりしてしまって、丘を登って来られないかも知れないから。』
『お前さん行ってお迎えして下さいよ、』ボーシスは答えました、『その間にわたしは急いでうちへはいって、あの人達に何か晩御飯を差上げられるかどうか見ましょう。一杯のおいしいパン入り牛乳は、あの人達の元気を引立てるのに、不思議なくらいききめがあるでしょう。』
 そこで、彼女は急いで家へはいりました。一方、フィリーモンは出かけて行って、この上もなく親切な調子で、
『ようこそ、旅の方々《かたがた》! ようこそ!』と言いましたが、彼の手をさし出す時の、いかにも喜んで迎える様子で、そう言われないまでも旅人達には彼の親切がよく分りました。
『ありがとう!』大変くたびれて、また困っていたにも拘らず、二人のうちの若い方が、元気な調子で答えました。『これはまた、向うの村で受けたのとは、まるで違った挨拶ですね。一体、あなたはどうしてこんなに柄《がら》の悪い所に住んでいるんです?』
『ああ!』フィリーモンは、静かに、やさしく笑って言いました、『ほかにもわけはありましょうが、神様はわしをここに置いて、村の人達がひどくしたお前さん方に、出来るだけの償《つぐな》いをするようにとのお心だと思いますのじゃ。』
『よくも言って下さった、おじいさん!』と旅人は笑いながら叫びました、『そして、実際のことをいうと、僕の連れと僕とは、本当に何とかしてもらいたいところなんですよ。あの子供達(まるで小ギャングですね!)は、泥のかたまりを投げつけて、僕達をすっかり泥だらけにしてしまいました。それから、やくざ犬のうちの一疋が、もとから大分ぼろだった僕の外套を引裂いてしまうし。しかし僕はそいつの鼻っぱしを、杖で横から打ってやりましたよ。こんなに遠くても、そいつが鳴いたのが聞えたろうと思いますがね。』
 フィリーモンは彼が大変元気なのを見て、嬉しく思いました。また、実際、誰しも、彼の顔附や様子を見ると、長い一日の旅に疲れ切っている上に、最後になってひどい目に遇ったのでがっかりしているとは思えなかったでしょう。
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