今君達にかまっていられないんだ!』その学生はペンをもったまま、肩越しにふりかえって、そう叫んだ。『一体ここに何の用があるんだ? 君達はもうみんな寝たと思っていたのに!』
『ペリウィンクル、まあどうでしょう、にいさんがまるで大人みたいな口のきき方をして!』とプリムロウズは言った。『そして、にいさんはあたしがもう十三にもなって、大方自分の好きなだけ起きていたっていいんだってことを忘れているらしいわ。しかし、ユースタスにいさん、あなた気取ることは止《よ》して、あたし達と一しょに客間へ来なくちゃ駄目よ。みんながあなたのお話のことを、あんまりしゃべっちゃったもんで、お父さまもそれが悪い話じゃないかどうか、一ぺん聞いてごらんになりたいんですって。』
『ちぇっ、ちぇっ、プリムロウズ!』と学生は少し腹を立てて叫んだ。『僕はああいう話を大人の前でちょっとやれないなあ。それに君んとこのお父さんは、古典を知っていらっしゃるだろう。しかし別にお父さんの学問をおそれるわけじゃないよ。というのは、それはもうとっくに、古い鞘附《さやつき》ナイフみたいに錆《さび》っちゃっているにきまっているからね。しかし、その代りに、僕が自分の思いつきで、ああした話の中へ入れたすばらしいナンセンスに対して、きっと文句をつけられるよ。それがあるから、ああした話が君みたいな子供達にとって、大変面白くなっているんだけどね。若い時分にギリシャやローマの神話を読んだ五十代の人には、それらの神話の改作者、改良者としての僕の功績は、どうしたって分りはしないんだから。』
『それはみんな本当かも知れないわ、』プリムロウズは言った、『でも来なくちゃいけないことよ! あなたうまいことをおっしゃったけど、そのあなたのナンセンスというのを、少しみんなに聞かせて下さらないうちは、お父さんは本を開こうとなさらないし、お母さまはピアノをあけようとなさらないんですもの。だから、おとなしくついていらっしゃい。』
どんな顔をして見せたにせよ、その学生は、よく考えてみると、古代の神話を現代風につくりかえる彼の立派な腕前はこんなものだということを、プリングル氏の前で実地に見せる機会が出来たことは、いやなどころか、寧ろ嬉しいくらいだった。実際、青年は、二十《はたち》になるまでは、自分の詩や文章を見せることを、どちらかといえば恥ずかしがるものだ。しかし、そ
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