のくせ、彼等は、それが一旦世間に知れたら、文壇の王座にでも坐れるもののように考え勝ちである。そんなわけで、ユースタスも、あまりさからおうとしないで、プリムロウズとペリウィンクルとに、客間の中へひきずり込まれて行った。
それは大きな、立派な部屋で、一方の端に半円形の窓があって、そこの壁の凹んだところに、グリーナウ作の「天使と小児」の大理石の複製が飾ってあった。いろりの一方の側には、重々《おもおも》しく、しかし贅沢に装幀した本が、幾段にも棚にならんでいた。アストラル・ランプの白い光と、よく燃えている石炭の赤い火とで、部屋はあかあかと気持よく照らされていた。そして、いろりの火の前の深い肱掛椅子には、プリングル氏がかけていたが、その様子は、そうした部屋の、そうした椅子に坐るのに、いかにもふさわしかった。彼は額《ひたい》の禿上った、背の高い、大変立派な紳士だった。そしていつも大変きちんとした身なりをしていたので、ユースタス・ブライトでさえ、彼の前に出る時には、少なくとも閾のところでちょっと止まって、シャツのカラーをちゃんと直さないと気がすまなかった。しかし今は、プリムロウズが彼の一方の手を、そしてペリウィンクルが他の方の手をつかまえているので、彼はまるで一日じゅう雪の中をころがりまわっていたような、だらしのない恰好ではいって行くほかなかった。また事実、一日じゅう雪の中にいたにはちがいなかったが。
プリングル氏は随分とやさしく学生の方を振り向いたのであったが、それでも学生の方ではその態度に圧《お》されて、自分がまるで櫛もブラシも当てないで来たこと、それに心も考えも、身なりと同じように、まるで、まとまっていないというので、気が引けるのであった。
『ユースタス、』とプリングル氏は微笑を浮かべて言った、『君は話の腕前のいいところを見せて、タングルウッドの子供達の間で、大変評判になっているそうだね。この子――子供達仲間じゃプリムロウズといってるそうだが――それからほかの子供達もみんな、あまりやかましく君の話をほめるんで、家内とわたしとも、是非その見本を一つ聞いてみたくなったんだがね。殊にそれが、ギリシャ、ローマの古い寓話を現代的な空想や感情を盛《も》った言いあらわし方に変えようとする試みらしいので、わたしには一層面白そうに思える。子供達からの又聞《またぎ》きだが、話の中のいくつかの
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