せて、自分の兄だといツたもんだから、ぢいさん忽ちのろくなツて、それなりけりになツたんだよ、其おかげであの馬鹿殿を胡麻化して、よツぽど借金のかたをつけたんだアね……だがあすこの奥方は中々悧口だよ、私と露との事を見あらはして、とう/\二人ともおはらひ箱さ……でも私も少し義理があるもんだから、仕方なしにこツそり家にいれたのよ、けれどもおかげで大事の名誉はめちや/\になツたし……それにもう何もかも大抵とり上げたから、此上猶家におけば、只損になるばかりだよ、だからおツ母さん、お前気をきかして、もうそろ/\いぢめておやりよ」残酷きはまる言の葉を、平気の平左で花のやうな愛らしい口から吐出すおそろしさ、母はつく/″\きゝゐしが「なる程きけばそれもさうさね、だが[#「だが」は底本では「だか」]お前、此頃のやうに仕事がなくツては、実にこまるね、東西新聞もふみ倒されてるし、露はお払箱にきめたところで……大きな方はかたづいたが、まだはしたがねが残つてゐて、うるさく催促されるもの、其あとはどうするへ」「なに心配するにおよばないよ、私にはまたいろ/\の手があるから」「さうかへ、ならいゝが」といひつゝ我子をぢツと見
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