ぢいさんのくだらない話が否で仕様がないからさ」涙声に力をいれて「うそばツかり」顔をしかめて「またそんな邪推をいふよ」腹立しげに「邪推ぢやありませんよ……あなたはもう私に秋風が立たのでせう」「馬鹿お言ひ、今日まで出入のできるのも、みんなお前のおかげだもの」「それをお忘れなさらないの」「忘れるもんか」「だツてあなた」「あなた/\ツてどうしたんだへ」「どうもしませんが……あのね、お姫様はあなたにこがれてわづらツてるの」「くだらない事を、此間行ツた時、あんなに丈夫でにこ/\してゐたぢやないか」「さうですよ。今は、もう直ツたんですもの……だが、お姫様の病気がよくなツたらあなたは御前の方へいらツしやらないもの、どうしてもあやしいわ」と三ツ輪の頭をうなだれる。今宮さてはと心のうちにおどろきしが、色にも見せず腹立しげに「とんでもない、馬鹿な事を、おれだツて房雄さんといろ/\話があるから、そんなにぢいさんの方にばかりもゆかれないよ、さうお前のやうに、うるさく疑ぐられてはほんとに否になるよ」涙ぐみながら「どうせそれやアお否でせうよ、私しやお姫様のやうに美くしくはないから」いま/\しさうに「ぢや何だね、おれ
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