狂女
モオパッサン
秋田滋訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)普魯西《プロシア》

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「鷸」のへんとつくりが逆、86−1]
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 実はねえ、とマテュー・ダントラン君が云った。――僕はその山※[#「鷸」のへんとつくりが逆、86−1]《やましぎ》のはなしで、普仏戦争当時の挿話をひとつ思い出すんだよ。ちと陰惨なはなし[#「はなし」に傍点]なんだがね。
 君は、コルメイユの町はずれに僕がもっていた地所を知っているだろう。普魯西《プロシア》の兵隊が押寄せて来た頃は、僕はあそこに住んでいたのだ。
 その頃、僕のうちの隣りに、まあ狂女《きちがい》と云うのだろう、妙な女がひとり住んでいた。たび重なる不幸で頭が変《へん》になってしまったんだね。話はすこし昔にかえるが、この女は二十五の年紀《とし》に、たった一月《ひとつき》のうちに、その父親と夫と、生れたばかりの赤ン坊を亡くしてしまったのだった。
 死と云うやつ[#「やつ」に傍点]
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