しました。それにもかかわらず、私は不実だったのです。私はあの子を気狂のように逆《のぼ》せあがらせてしまいました。私にしてみれば、それは一つの遊び[#「遊び」に傍点]だったのです。また、それは、あの子の母にとっても私の母にとっても、愉しい気晴しだったのです。何にせよ、その子はまだ十二なのですからね。考えてもみて下さい。そんな年端もゆかぬ子供の愛をまにうける者がどこにあるでしょう! 私はその子が満足するだけ接吻をしてやりました。優しい手紙も書きました。その手紙は母親たちも読んでいたのです。その子は火のような手紙を書いて返事をよこしました。手紙はいまだに蔵《しま》ってあります。その子はもう一人前の男のつもりでいたので、自分たちの仲は誰も知らないものだとばッかり思っていたのでした。私たちはこの少年のからだをサンテーズ家の血が流れているのだということを忘れていたのです!
 かれこれ一年の間、こういうことが続きました。ある晩のことでした、少年は庭で出し抜けに私の膝のうえに倒れかかって来て、狂気のような熱情をこめて、私の着物のすそ[#「すそ」に傍点]接吻をしながら、こう云うのです。
「僕はあなたを愛
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