2−11]ってみたところですぐまた同じところへ来てしまう。いくら※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]ったって限りのない円なのだ。そこには思いがけぬ枝道があるのでもなく、未知への出口があるわけでもない。ただぐるぐる※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]っていなければならないのだ。同じ観念、同じ悦び、同じ諧謔《かいぎゃく》、同じ習慣、同じ信仰、同じ倦怠のうえを、明けても暮れてもただぐるぐると――。
今夜は霧が深くたち籠めている。霧は並木路をつつんでしまって、鈍い光をはなっている瓦斯《ガス》灯が燻《くすぶ》った蝋燭のようにみえる。私の両の肩をいつもより重く圧《お》しつけているものがある。おおかた晩に食ったものが消化《こな》れないのだろう。
食ったものが好く消化れると云うことは、人間の生活のうちにあってはなかなか馬鹿にならないものなのだ。一切のことが消化によるとも云える。芸術家に創作的情熱をあたえるのも消化である。若い男女に愛の欲望をあたえるのも消化である。思想化に明徹《めいてつ》な観念をあたえるのも、すべての人間に生きる悦びをあたえるのもやはり消化である。食ったものが好く消化れ
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