ある自殺者の手記
モオパッサン
秋田滋訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)深更《しんこう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]
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 新聞をひろげてみて次のような三面記事が出ていない日はほとんどあるまい。

[#ここから2字下げ]
 水曜日から木曜日にかけての深更《しんこう》、某街四十番地所在の家屋に住む者は連続的に二発放たれた銃声に夢を破られた。銃声の聞えたのは何某氏の部屋だった。ドアを開けてみると借家人の某氏は、われと我が生命《いのち》を断った拳銃を握ったまま全身あけ[#「あけ」に傍点]に染って打倒れていた。
 某氏(五七)はかなり楽な生活《くらし》をしていた人で、幸福であるために必要であるものはすべて具《そなわ》っていたのである。何が[#「何が」に傍点]氏をしてかかる不幸な決意をなすに到らしめたのか、原因は全く不明である。
[#ここで字下げ終わり]

 何不足なく幸福に日を送っているこうした人々を駆
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