いるのだということをフト思った。泥棒が這入《はい》って来たらどうしよう? 金は持ってないからまあいい。だが、金庫へ案内しろなどと言われて、背後からドキドキするメスか何かつきつけられて、賊の命のままに行動しなければならないとするとチト残念だ。しかし、よもや強盗などはやって来まい。家の者が皆、出かけていることは誰も知らないのだし、門も、それから廊下も便所の口もちゃんと二重錠がかけてあるのだ――
「…………」
田中君はふと腰を浮かした。庭のあたりで、たしかに、何か悲鳴のようなものが聞えたのである。
「…………」
耳をすました。それから、立って窓ぎわまで忍び足で行って見た。
「畜生!」
とこん度はたしかに太い男の声で今にも相手に飛びかかるかのように聞えた。風が、またひとしきり吹き荒んだ。
庭ではない、門のあたりだ。雨と、風に交って、たしかに何かを争うドドドという地ひびきが感じられる。
ヒーッと鋭い叫びがした。ドタドタと地揺れがした。たしかに風の音ではないのである。
「…………」
女の悲鳴だ。
田中君の胸はいつかトキントキンと動悸《どうき》を打っていた。
と、つづいて、
「打ち殺
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