鎌倉でみて来た京子の死は一体何を意味するのだろう。京子は自分に「完全なる犯罪」を実証するために自殺したというのだろうか。
いやいや、そんな馬鹿々々しいことが信じられる筈がない。
誰かが、見えざる敵が、自分と京子を操っているのだ。そして、「完全な犯罪」劇を演ずるために、京子を被害者に、自分を加害者に選んだのに違いないのだ。だが、そいつは一体何者だろう。
星田の頭には、又しても、あの気味の悪い、鋭い眼の持主のことが浮んできた。
「あいつだ! あいつが何も彼も操っている人形師なのだ」
しかし、残念なことには、女給たちの誰もが、その男については何一つ知らなかった。その男ばかりではない。もう一人の洋装の女についても知っている者はなかった。
しかし、星田はもう決して失望しなかった。あの二人が京子と一緒だったという以上、最近の京子の生活状態を調べてゆけば、必ずや彼等の素性が分るものと思い込んだからである。
星田は一先ず家へ帰って、もう一度よくこの問題を考えてみようと思った。しかし、彼が一歩、自分の部屋へ入った刹那星田代二は真蒼になってそこに凝結した。
部屋の中には、正岡警部がいた。そし
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