に始末した。継ぎ足しの軌条《レール》は剥取って遠くへ運び去った。そこで一同はどさくさせぬように、しかし一刻の猶予もなく、国外へ逃げ延びる仕度をした。大部分は巴里《パリー》を指して、例の英国人はマンチェスターへ、そしてマックファースン[#「マックファースン」は底本では「マックファーン」]はサザムプトンへ、そこから亜米利加《アメリカ》へ移住するために。
『諸君は、ゴメズが窓の外へ書類袋を投げ出したというあの一事を覚えておるだろう。自分がそれを拾って巴里《パリー》の巨頭等の手に渡したことはもちろんの話だ。
『けれども我が閣下等よ、閣下等は余があの袋の中から一二枚の小形の書類を、あの事件の記念として抜取っておいたことを知るならば、いかなる感じを起すだろうか。自分は元よりそれらの書類を公表するつもりはない。しかし、そこが問題である、現在我が友の助けを求めつつ自分のために、我が友が敢てその挙に出《い》でない場合、自分は公表の外《ほか》にいかなる手段に出ることが出来るだろう? 閣下等よ、閣下等はこのヘルバート・ドゥ・レルナークが、味方として頼むべく、敵として恐るべき男子であることを信じてもよいはずだ
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