には、すでに列車は激しいきしり音《ね》を立てながらカーヴを曲っていた。主従は彼等の面前に竪坑の真黒な入口が巨大な顎《あぎと》を開いて待っているのを見た。我々は真四角な入口の板蓋《いたおお》いを取り除いておいたのだ。軌条《レール》は既に、石炭の積載に便利なように坑のほとんど入口まで引込んであった、それだから坑のすぐ縁まで線路を導くためには、我々は二三本の軌条《レール》を継ぎ足しさえすれば事が足りたようなわけである。我々は客車の窓に二つの首を見た、カラタール氏が下に、ゴメズが上に、しかし二人は目前《めのまえ》に見たもののために、叫声《さけびごえ》ももはや凍ってしまったようだ。しかもなお、彼等は首を引込めようとはしなかった。おそらく眼の前の光景《ありさま》が彼等の総身を麻痺させてしまったのだろう。
『遂に最後の瞬間が来た、機関車は轟然たる大音響と共に坑の向う側に突撃した。煙筒《えんとつ》は断ちきれて空中に飛上った。客車と車掌乗用車とは粉砕されてごちゃまぜになり、機関車の残骸と共に、一二分の間坑口を一ぱいに塞いだ。やがてミシミシという音響を発して真ン中の部分がまず頽《くず》れ始め、続いて、緑色
前へ
次へ
全34ページ中29ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドイル アーサー・コナン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング