詞を挟んだ。ロス大佐は腕を拱《こまね》いて反身《そりみ》に座席に身をもたせて、帽子を眼のあたりまですべらせ黙々として耳を傾けていた。私は二人の探偵の対話をいと興味深く聴いていた。グレゴリは自分の意見をも述べていたが、それは来がけの汽車の中でいったホームズの言葉とほとんど変らなかった。
「フィツロイ・シムソンはそういうわけで、四囲の状況が非常に不利なわけです。私一個としても彼が犯人であることを信じています。同時に、その証拠が全く情況証拠ばかりですから、何か新事実が現われればいつでもこの嫌疑は覆えされるものであるということも認めなければなりませんが」
「ストレーカのナイフについてのお考えは?」
「あれはストレーカが倒れる時、自分で自分を傷つけたための血痕だと決定しました。」
「ワトソン君も来る途中で、そうじゃないかしらといっていましたが、それが事実だとすると、シムソンにとっては不利な材料になるわけですね」
「その通りです。シムソンはナイフも持っていなければ、身体に傷一つなかったです。彼に対しては極めて有力な不利な証拠があります。第一に白銀の消失は彼に莫大な利益をもたらします。彼には厩番のハ
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