中はからっぽなんじゃありませんか。まあ、その時の私の驚き方をご想像下さい。
無論私は、第一番に待合室にとんでいってみましたよ。するとどうです、その息子もやっぱりいないのです。大広間のドアが閉められてはいましたが、鍵がかけてなかったのですね――その患者たちを案内して来たボーイは、まだ来たばかりのボーイで、とにかく気がきかないのです。で、彼はいつも階下に待っていて、私がベルを鳴らすと二階へとんで上って来て、患者を下へつれておりることになっていたのです。――そのボーイも何も物音を聞かなかったと云うのです。こうしてこの日のこの事件は全くわけの分からないままにすんでしまったのでした。――が、それからしばらくしてブレシントン氏がその習慣の散歩から帰ってきましたが、しかし私はその事件については何も話しをしませんでした。と云うのは、なるべく彼と、うるさい事件についてはかかり合わないような方針をとっていたからなのです。
こんなわけで昨日は不思議な事件が起きたままで暮れてしまい、それから今日は、私はまた今日の仕事に追われて、ついそのロシア人親子のことを忘れておりました。ところがきょうの夕方のこと、ふと
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