もお金をかけて飾らなくてはならないのです。おまけに、こうした予備的入費の上に、四五年は遊んで食うだけのお金の用意と、また見かけの立派な馬車と馬とをやとえるだけのお金を持っていなければならないのでした。こうしたことをするのは、全く私の力以上のことで、でなくても、少くも十年間私が倹約して貯金してからでなくては、そんなことは出来そうもなかったのです。――ところがどうです、その時突然、全く思いもかけなかった一つの出来事が、私に新しく私の前途の望みをひらいてくれたのです。
 それは、私には全然赤の他人の、ブレシントンと云う名の紳士に訪問されたことでした。彼はある朝突然に私の部屋にやって来て、いきなり話をきり出しました。
「あなたは、例の大学時分非常なすぐれた成績をおあげになって、そして最近例の賞盃をおもらいになった、あのペルシイ・トレベリアン君でしょう?」
 彼は申しました。私はそうだと答えました。
「では、どうぞ卒直にお答えになって下さいませんか」
 彼はつづけました。
「そうして下さるほうが、あなたのおためになるのです。――あなたは人間を成功させるための賢さはみんな持っている。――ところで世
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