に私はロンドン大学の卒業生なんです。実は、自分で自分のことをほめてお話しするのは変なものなんですが、私は学生時代、大学の教授達から前途を大いに嘱目されていたのでした。だものですから、私は卒業してからも、キング・コレッジ病院に職を奉じながら、自分の研究に没頭することをつづけておりました。私は幸福にも、顛癇病の病理学を研究する事に、異常な興味と昂奮とを持っていたのです。そしてただいまあなたのお友達が私をおからかいになった例の神経傷害に関しての論文によって、ブルース・ピンカートン賞と賞盃とをかち得ることが出来ました。――けれども私は、よしその時、そんなに素晴らしい前途が目の前に開《ひ》らけていても、私はそれからさきにすすむべきではなかったのです。
 と云うのは、私の大望をとげるには、一つの大きな障害を乗り越えなければならないのでした。こう申せばあなたにはもう既に了解していただけたことと思いますが、偉くなろうと云う、高い望みを持っている専門医は、カベンディッシ・スクエア区のうちの十二街のどれか一つに開業しなければなりませんでした。ところがそこに開業するには、素晴らしく高い家賃の家を借り、家の中
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