しておきましょう。どうにも出来ませんから、――しかしまだ私たちは、彼の女の婦人として受ける、最大の悲しい運命から、救い出すことが出来るかもしれませんからね」
私たちは全く夢中で、樹の間をうねり曲って、小径をかけ下りた。そして私たちは、建物を取りまいている、灌木の所に出た時、ホームズは一同を引き止めた。
「奴等は家には入らない、そら左の方に足跡がある。これからずっと月桂樹の横の方に、――ああ、云わないこっちゃなかった、――」
彼がこう云う途端に、女の帛《きぬ》を裂くような悲叫《さけび》! 恐怖のために狂乱してしまった咽喉から絞り出た、血も吐くような女の悲叫《さけび》が、私たちの前方の籔のかげから聞こえて来た。それと共にその悲叫《さけび》は、最も高く絞り上げられたと思う中《うち》に、急に咽喉でも締められたのか、窒息するように止まってしまった。
「こっちです、こっちです! 奴等は玉ころがしの囲の中に居るんです」
籔を突進して突きぬけながら、この見知らぬ[#「見知らぬ」は底本では「見知らね」]男は叫んだ。
「おい卑怯な犬共め! さあ皆さん来て下さい、来て下さい。ああ遅れました。ああ遅かっ
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