方でしたら、こっちに来て僕を助けて下さい。もし僕がチァーリントンの森で必死の覚悟を決めたら、彼の女を救うことが出来ましょう」
 彼は全く乱心したような様子で走り出した。そしてピストルを片手に持って生籬の切れ目に突進して行った。ホームズはすぐその後から続いた。それで私も、道の傍らに馬を放して草を食ませたまま、ホームズの後に従ってかけた。
「彼等はここから出て来たんです」
 彼はそう云いながら、泥の上にベタベタとついた足跡を指さした。
「おい、――ちょっと待て、――その籔かげに居るのは誰だ?」
 そこに居たのは十七才くらいの、革のズボンをはいて、ゲートルをかけた、馬丁風の若者であった。そしてその者は、膝を縛り上げられて、仰向けに寝かされて、その上に額をひどく割られて、気絶して倒れていた。しかし生きてはいたが、私はちょっと見たところ、その裂傷は、骨までは徹《とお》ってはいないものだと思った。
「ああこれは馬丁のペーターだ」
 この見知らぬ男は叫んだ。
「この男が彼の女の馬車を御して来たのですが、あの獣物《けだもの》連中は、この若者を引きずり降ろして、棍棒でやっつけたのだな。これはこのまま寝か
前へ 次へ
全51ページ中34ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ドイル アーサー・コナン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング