た、畜生め!」
私たちはヒョッコリと、大木に囲まれた中の、小さな芝生に出た。その芝生の向う側に、老樫樹のかげに、変な恰好の三人の者の姿を見止めた。その中の一人は、我々の依頼者の若い美しい女性で、口にはハンカチーフを巻きつけられ、全く気絶したように、正体もなく崩れ跼《うずく》まっていた。その向うには、残忍な、いかつい顔をした、赤髭の若い男が、ゲートルを巻いた脚を開いて突っ立ち、片方の肱は腰に曲げ、片方の手には、猟用の鞭を振り上げて、あたかも勝ちほこった馬鹿大将みたいに、意気軒昂としていた。それからその二人の間には、もう年配の、灰色の髭のある男が、スコッチ織の簡単な着物の上に、白い法衣を重ねて、今しも二人の結婚式がすんだばかりと云う様子をしていた。と云うのはその法衣の男は、私たちが現われた時ちょうど、祈祷書をポケットに入れて、その縁喜《えんぎ》でもない花婿の背中を、お芽出度《めでと》うとでも云ったように、ぽんとたたいたところであった。
「彼等は結婚したんだね」
私は喘ぎながら云った。
「来て下さい!」
我々の案内者は叫んだ。
「来て下さい!」
彼は芝生の上を横切って進んだ。ホームズ
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