の上に更に不思議なことには、その間には彼が遁《に》げこむような、横道は決して無いのでございます」
ホームズは喜色を漏らして、彼の手をさすった。
「この事件はなかなか特色がある」
彼は云った。
「あなたが道の曲り角をまがってから、道路の上に誰も居なくなったのを見たのは、どのくらいの時間がたってからでした?」
「まあ、せいぜい二分か三分だと思いましたが、――」
「それではその者は、道を真直ぐに遁げ帰ったはずはないが、――またそこには全く、横道もないと云うのですな?」
「ございません」
「それではその者は、どっちかの側に、遁げこんだのでしょう、――」
「もしそうだとすれば、それは荒地の方なはずはありません。もしそうでしたら、私から見えたはずでしたから、――」
「それでは我々は結局、その者はチァーリントン廃院の中に遁げこんだに相違ないと、考えることが出来ますな。いや私も知っていますが、あのチァーリントンの廃院は、すぐ道路の側《そば》になっていますからね。その外に何かありましたか?」
「ホームズ先生、もうそれだけでございますが、どうも私は先生にお目にかかって、いろいろと伺わない中《うち》は安
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