け次第、撃つわけにもゆかない。そうすればもちろん、僕は被告席に立たなければならないことはきまった話だ。官憲に訴えてももちろん何の効果のあることでも無い。彼等とて出鱈目《でたらめ》な嫌疑で干渉を入れるわけにもいかないからね。実際、万策つきた形であったが、しかし僕はまた逆に、新らしい犯罪に注目して、彼を逮捕する機会の来ることを待った。そこに来たのが、ロナルド・アデイア氏の死。果然!僕には好機は到来したのだ! これだけの経路を知って、さてなお彼をその真犯人ではないと思うかね? 彼はあの若者と骨牌をやった。それから彼は倶楽部から若者に尾《つ》けて来た。そして開かっていた窓を通して、一弾を狙い放した。この経路には寸分の疑いの余地はない。第一弾丸だけでも、彼の頭に捕蹄《わ》を打つに十分だ。僕はすぐに帰って来たが、早速見張りの者の目に止まってしまった。思うにあの見張りの者は、モラン大佐に通告したであろう。彼は流石に自分の犯罪と、僕の帰還の因果関係を等閑には附さなかった。彼は明かに驚愕した。それで更に僕は考えた。彼は早速僕を打ち取るために邀撃《ようげき》するであろう、――しかもそれにはかの怖るべき殺人
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