兇器を使用するに相違ないと、――それで僕は窓に、鮮かな目標を示してやったのだ。そしてしかも一方警官たちにもいずれ通諜しておいた。話の序《ついで》だがワトソン君、――君もあの場で感づいたに相違ないが、警官はいささかの猶予もなく、やって来たろう。僕は実は、観察に最も都合のよい場所をと思って、あそこを選んだのであったが、何ぞ図らん、彼の仕事場とかち合ってしまったのだ。さてわが親愛なワトソン君、まだ何かこの上にも説明しなければならないことがあるかね?」
「そりゃある、――」
 私は更に彼の説明を求めた。
「君はまだ、モラン大佐が、どうしてロナルド・アデイア氏を殺害したかと云う動機については、一言も触れないではないか」
「ああそうか、しかしワトソン君、これから先はもうどんなに理論的な推理でも、結局は臆測と云わなければならない世界になるんだがね。まあ双方で、解っているだけのことを基本として、仮説を立ててみよう。そしてお互に訂正し合おうじゃないかね」
「君にはもう出来ているだろう?」
「うむ。いやまあ、事実を想定することも、そう至難なことでもないと思うがね。第一、モラン大佐とアデイア青年とは、その仲
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