どうしても証拠を上げることが出来なかったのだ。モリアーテー教授の一党が、解散となった際にも、彼は実によく隠れて、遂に我々は彼を有罪にすることは出来なかった。君はあの僕が君の室を訪ねて、ひどく空気銃を恐れて、神経質に閉めたことのあったのを、知っているだろう。君はあの時僕を妄想者だと思っただろうが、実際僕は、この恐るべき空気銃と、その後には更に畏怖すべき名射手の居ることをよく知っていたので、僕はやはりああせざるを得なかったのだ。われわれがスイッツァランドに居た時に、モリアーティと共に俺達に尾《つ》けたのも彼であるし、またライヘンバッハの滝の断崖で、僕に呪うべき五分間を与えたのも、明かに彼であったからね。
僕はフランスに滞在中も、もしや彼に尾《つ》けられはしまいかと云うことを警戒するためによく注意して新聞を読んだ。たしかに彼がロンドン内に健在の中《うち》は、僕の生命と云うものは、全く生き甲斐もなく威嚇されたものであった。昼夜の別なく、彼の幻影は僕の眼前に彷彿とする。そしてまた狙われることになると、いつかはチャンスが来ることに相違ない。僕は全く途方に暮れざるを得ないではないかね。僕は彼を見つ
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