着たので、依然たるシャーロック・ホームズに返った。
「しかしあの老猟師の神経はやはりまだ正確で、また視力も依然鋭いものだね!」
ホームズは半身像の打ち砕かれた額を検《しら》べながら云った。
「後頭部の中央に正確に的中《あた》り、脳を貫通しているよ。彼は印度《いんど》では第一の名射手であったが、しかしこのロンドンでも、彼の右に出ずる者は、はなはだ少なかろうと思うな。それとも君は誰かきいたことがあるかね?」
「いや、――」
「そうだよ。彼はそれほどに定評者だよ。さてそれからたぶん君は現世紀で最も偉大な頭脳の所有者の一人である、ゼームス・モリアーティ教授の名前を、まだ知らなかったと思うがね。ちょっとその伝記索引を、本棚からとってくれたまえ」
彼は不精らしく頁《ページ》をくって、椅子に反り返って、葉巻から大きく煙を吐いた。
「M部の蒐集は大したものだよ」
彼は説明し出した。
「まあモリアーティは云わずもがな、大したものだし、それから毒殺者のモルガンがある。それからあの忌々しいマシュウス。チャリング・クロスの待合室で、俺の左の犬歯をたたき折った奴。それから最後が、吾々の今夜の友人、――」彼
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