映していたに相違なかった。
「ハドソン夫人、僕はあなたの最善の注意を、念願していましたよ」
ホームズは夫人に云った。
「わたしはあなたから云われた通り、膝で歩いてやりましたわ」
「上出来です。あなたは実によくやって下さいました。あなたは弾丸がどこに飛んだか、御覧になりましたか?」
「え、見ましたわ。弾丸はあなたの美しい半身像を、痛ましく損ねたようでございますよ。弾丸は右から頭部を貫通して、後の壁に当って、平べったくなりましたの。わたしはそれを床敷《カーペット》の上から拾ってここにございますわ」
夫人のさし出した弾丸を、ホームズは私の前にさし示した。
「ワトソン君、君の御覧の通り、柔軟性の弾丸だ。しかしたしかに全く天才だね。まさかこんなものが、空気銃から飛び出て来たものだとは、思わないからね。いやハドソン夫人、実に有難う、衷心から感謝します。あなたの御助力には、満腔の謝意を表明します。さてワトソン君、一つこの昔馴染の椅子に掛けてくれないかね。実は君と大に談じてみたい問題もあるんだが、――」
ホームズは見すぼらしいフロックコートを脱ぎ捨てて、半身像から例の鼠色の寛服《ガウン》を取って
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