たロンドンには、僕を狙う敵がただ一人っきり居ないと云うことを知ったので、もう出発しようと思っていた矢先に、かのレーヌ公園の魔の事件があったので、僕の行動は急に敏活となった。この事件は、事件そのものも、大に僕にさし迫るものもあったが、またその外に、ある個人的な、特殊な機会も含まっておるように思われたのだった。僕は早速ロンドンに直行したが、まず自らベーカー街に現われて、ハドソン夫人を驚かして、癪を起されてしまった。弟のミクロフトは、実によく僕の書斎を管理していてくれて、新聞紙などまでが、全く昔日の通りにきちんと整理されていた。さてワトソン君、このようにして僕は、今日の二時には、あの昔馴染の室の、昔馴染の椅子に収まったと云うわけさ。そこで僕のこの上の希望は、他のもう一つの椅子に、これまでしばしばあったように、わが親友の、ワトソン君を迎えることの出来ることなんだがね」
以上のことは、僕はこの四月の宵に聞いた、驚異すべき物語りであるが、この物語りはもちろん、もし僕が現に、彼の脊の高い痩せた身体と、鋭い熱意のあふれた顔とを確に見なかったら、――もっともこれはとても二度とは逢われるものと夢想もしな
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