しのつかないことだからね。僕の弟のミクロフトの方は、どうも金が入用だったので、これは止むを得なかったのだ。しかもロンドンにおいての、事態の進捗は、どうも僕が予期したようにうまくはいってくれなかった。モリアーティ一味の者に対する審問は、その中《うち》の最も怖るべき人物で、僕に対しては最も復讐の念に燃えている者を二人も放免してしまった。そこで僕は二年の間は西蔵《チベット》に旅行し、拉薩《ラッサ》に遊んで、剌麻教《らまきょう》の宗長とたのしい数日も暮した。君はあの諾威人《ノールエじん》シガーソン[#「シガーソン」は底本では「シガーリン」]の、有名な探険記を読んだかもしれないが、しかしおそらく君はその中で、君の友人の消息については、何物も知るところは無かったろう。それから僕は波斯《ペルシャ》を通りメッカを見物し、それからちょっとではあったが、カァールトウムのカリファに、興味ある訪問をした。そしてこの事は僕は、外務省には通報しておいた。フランスに帰ってからは、数ヶ月の間、コールタールの誘導物の研究に没頭し、南方フランスのモントプリーエの研究所では指導してやった。それから僕は、満足する結果を得、ま
前へ
次へ
全53ページ中23ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドイル アーサー・コナン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング