じ》をつなぎ、その上に銃を置かなかったかね? すなわち君の虎を育て上げる餌を求めるために、――ははははははは、この空家は私の木、――そして君は僕の虎だ。君はたぶん他の銃の持ち合せもあったであろう、――すなわちもしや数頭の虎が居た場合か、または、それは君にははなはだ応《ふさ》わしくない想定かもしれないが、撃ち損じをした場合の用意として、――」
こう云って彼は周囲を指し、
「これ等は僕の他の銃だ。ははははははは、この比喩は面白い」
モラン大佐は激怒して、咆吼しながらホームズに飛びかかって来た。しかし巡査に遮られて引き止められてしまった。その形相がまた、いかにも凄かった。
「まあ実のところ、僕は君にただ一つの意外に驚かされた」
ホームズは更に云った。
「実際僕は、まさかこの空家とこのあまりな好都合な窓とを、君自身が御出張で利用するものとは想像しなかったよ。僕の想像ではまあ、あの僕の友人のレストレード君やその一味の者が君を待ち受けている、往来から来るものと思っていた。まあこれだけが唯一の予想外で、あとはすべて思う壺だったわけさ」
しかしモラン大佐は刑事の方に向いた。
「君は僕を逮捕する正当の理由を、持っているかもしれないがあるいはまた、持っていないかもしれない」
彼もこう言葉を向けて来た。
「しかし僕は少なくとも、この人間の嘲笑を、我慢してきいていなければならないと云う理由はないと思う。僕はいずれ、法の適用を受けるのであったら、あくまで合法的にやってもらいたいものだ」
「なるほどそれは当然のことだ。ホームズさん、私達はゆくまではどうぞ、何も仰らないで下さい」
レストレードも云った。
しかもこの時はホームズは床の上から、かの強力な空気銃を取り上げて、その機械を調べていた。
「これは全く恐怖すべき独特の武器だ。音もしないでいて、驚くべき偉力を発揮するんだからね」
ホームズは感歎した。
「僕はあの独逸《ドイツ》の盲目の機械師の、フォン・ヘルダーを知っていたが、この銃は彼が、死んだ、モリアーテー教授の注文で、組み立てたものだ。僕も長年の間、この存在には深く注意していたが、しかしついぞ今日まで、これを手にする機会はなかったものだ。レストレード君、この銃とそれからこれに添えた弾丸とは、君の最善の注意に委托しますよ」
「それはもう御安心下さい。ホームズさん、――」
レス
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