戸の外でお待ちしておりましたもので、よくそれが分りましたよ。けれどもそのうちにとうとう外へ出て来て、「帰って来ないようじゃないか」とおっしゃるんです。ですから私は申し上げました。「ほんのもう少しお待ちになって下さい」って。すると「じゃ、じき戻って来るよ」と云って出ていっておしまいになるんでしょう。それから私、まだいろいろ申上げたんですけれど、でもお引き止め出来ませんでした」
「よしよし、結構結構」
とホームズは云って、私達は部屋の中に這入った。
「こりゃアちょっと厄介《やくかい》だね、ねえワトソン君。どうもよほどむずかしい事件らしいよ。訪ねて来たと云う男がイライラしていたと云うことから推察しても、重大な事らしいね。――オヤ、テーブルの上にあるパイプは君のじゃないだろう。今来た男が置き忘れていったに違いないな。こりゃよく使いこんである。煙草吸いが琥珀《こはく》と云っているものだが、これはなかなか上等な品だ。僕はそう思うんだが、ホン物の琥珀のパイプが、いくつロンドンにあるかね。なかには、『琥珀の中の蝿』がホン物のしるしだと思っているものもあるようだけれどもしかし贋物《にせもの》の琥珀の中
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