近寄って来ました。彼女は蒼白な顔をし、恐怖に満ちた目をしていながら、唇の上には微笑《びしょう》を浮べておりました。
「まあ、ジャック、――私ね、今度いらしったお隣さんへ、何かお力になって上げられるようなことはないかと思って、伺《うかが》った所だったのよ。――まあ、なんだってそんなに私をご覧になるの、ジャック。何かおこってるの?」
 と、彼女は申しました。
「そうか、昨夜、お前が来たのはここだろう?」
 私は云いました。
「なんですって?」
 彼女は声を高くしました。
「お前は来た。それは確かだ。――一体、お前がそうやって一時間ばかり会いにやって来なければならない人間って、何者なんだ?」
「私、今ままでにここへ来たことなんかありませんわ」
「どうしてお前は私に嘘をつくんだ?」
 と、私は怒鳴りました。
「お前のしゃべる声はまるで変ってるじゃないか。お前は今までに、私に何かものをかくしていたことがあるか?――よし、私はこの家《うち》の中へ這入ってって、徹底的に調べてやる!」
「いけません、ジャック、お願いですわ」
 彼女は夢中になって叫びました。そして私が入口に近寄って行くと、私の袖口にし
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