うと考えていることも、私にはよく分りました。――私たちは朝飯《あさめし》の間一言も口をききませんでした。そして朝飯がすむとすぐ私は散歩に出かけました。私は朝の澄んだ空気の中で、昨夜からの事件を考え直してみようと思ったのです。
私はクリスタル・パレス(ロンドンの南部にある遊覧所)の辺《へん》までも歩いていって、そこで一時間ばかり腰かけておりました。そして一時頃にノーブリーに帰って来ました。――と、偶然に私は例の離れ家の前に出ました。私はしばらく立ち止って、前日私をじっと見詰めていた例の気味悪い顔を、もう一度見つけることが出来るかもしれないと思って、あの窓を見上げてみました。するとどうです、ホームズさん、ふいにその家《うち》のドアが開かれて、中から私の妻が出て来たではありませんか。まあ、その時の私の驚き方を想像してみて下さい。
私は驚きの余りものも云えませんでした。しかし私たちの視線が出会った時、彼女の顔に現れた驚きの表情は、私のより更に激しいものでした。彼女は瞬間にちょっとまた家《うち》の中に逃げ込もうとするような様子を見せましたが、もう到底隠れることが出来ないのを知ると、私のほうへ
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