しないで、壁のほうを向いたまま、どうしてやろうかと考えました。私の心は恐ろしい疑念や猜疑心で一ぱいでした。――私の妻が私に隠していることはどんな事なんだろう。そして一体さっきはどこへいって来たんだろう。――私はそれらを確めるまでは、到底平和な気持ちになることは出来ないと思いました。けれどそのまま、二度と彼女に質問しようとはしませんでした。そしてその夜《よ》は一晩中、私はそれらのことを確める方法を考えて、まんじりともせずに転輾反則《てんてんはんそく》しました。が、どの方法を考えてみても、結局、いそいでなじったりなどしないほうがよさそうでした。
 そうこうしているうちに夜《よ》があけましたが、その日、私は町へ行く手筈《てはず》になっていたのです。しかし私の心はすっかり滅茶滅茶になっていて、到底商売上の取引などは出来そうにもありませんでした。また私の妻も私と同じようにすっかり平静さをなくしているらしく見えました。私には、彼女が窺《うかが》うようにチラッと私を見た目つきでそれが分ったのです。そして彼女はまた、彼女が前の晩した云いわけを私がちっとも信じていないと云うことを知っていて、どうにかしよ
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